突き抜けたキャラはいないものの、安定した面白さを持った物語でした。

勇者に敗れ逃げ込んだ異世界・現代の東京で、魔力回復の方法を見つけるまで、部下のアルシエルと共に貧乏生活を続ける魔王サタンこと真奥貞夫。自分の置かれている境遇を嘆くかと思いきや、むしろすっかり現代生活に馴染み、アルバイトに精を出しまくっているという…。しかも、何あの完璧な接客態度。文句のつけようがないよ！　プライベート時も好青年だし、異世界エンテ・イスラで人々を蹂躙し恐怖に陥れた魔王とは思えません。「下のもんの失態は～」の辺りなんて、かっこよくてキュンときちゃいましたよ。
「魔王」としては、「世界征服」をはじめ色々と間違った方向に進みつつある魔王の姿に、アルシエルが嘆くのも仕方ないですが、何だかんだ言って彼も立派な主夫になっていますよね…。へそくり…。

姿どころか性格まで変わっている魔王一行に、さしもの勇者エミリアも愕然。…とはいえ、彼女もすっかりこちらに馴染んじゃっていて吹いた。「魔王サタン」は憎いけれど、人々を助ける「真奥貞夫」は憎めない。そんな複雑な思いを抱えたエミリアが最後に少しだけ真奥にデレていましたが、個人的には今の微妙な距離を保ったままでいてほしいです。エミリアが魔王を憎んでいた理由が理由なので、素直に絆されるとちょっとなぁ…。

魔王たちの命を狙う一派の陰謀が絡んだバトル展開もなかなか良かったし、魔王たちの庶民じみたやり取りも面白かったので、続きも是非読みたいですね。敵さんがこれで諦めるとも思えないし、ちーちゃんの恋の行方も見届けたいし、魔王が丸くなった理由や魔王と勇者母の関係など気になる謎も残っているし！
その際には、魔王城(六畳一間)での男3人の様子を詳しく！　

«追記を閉じる